積極的に何をやめるか議論しないといけない

 もう近頃は本当に雑務が増えてしまって、フレックスなのに出勤退勤時刻を記録しろとか、鬱の学生に計算で卒論書かせるためにパソコンを一通りセットアップしてアパートに郵送してzoomで指導したりとか、進級の説明会とか、大学が業績を稼ぐためにやっているしょうもない国際会議の審査員とか、もう大変です。ホント、研究ができない。

 そういう状況はどこの大学でも同じだと思うんですが、先生方はどの時間減らしてますかね?まさか業務効率化によって質を落とすことなく研究も教育も雑務も全部やってますなんて人いませんよね?あとは夜中まで仕事するとか?いやいや、もう昼間のパフォーマンス落とさないで済む限界の睡眠時間ですよね。

 で、私の場合は増えた雑務で減っているのは卒論、修論の指導の時間です。昔だったら赤ペンと青ペンでで懇切丁寧に指導してたのが、もう今はワードでコメントいれて、二回言っても治らなければこっちで直してしまってます。当然学生の学習機会を奪っていることになりますが、もう二度も三度も同じことを懇々と指導し続ける余力がありません。

 大学で卒論、修論指導以上に大切なことってそうないと思うんですよね。しかし、卒論と修論の出来不出来は大学の評価指標に入っていないので、管理されず、それぞれの先生の裁量に任されてしまう。論文のチェックだって発表中にササっと回覧するだけだし、発表も十数分しかないからいくらでも取り繕うことができてしまう。なので、実際のところは卒業生の質はどんどん落ちていると思います。このまま雑務が増えていけば、発表会で取り繕えなくなる限界まで質が低下すると思ってます。

 で、現状の問題は、雑務が増えた分、何か既往の仕事に割り振る時間が減っているはずだが、その時間が減らされる仕事が適切に選択されていない事だと思ってます。マンパワーを減らしていい仕事ではなくて、減らしやすい仕事から手を抜いている。だから、私は新しいことを始めるときと同じくらいの熱量でやめることを議論しないとだめだと思うのです。しかし、何か仕事やめておきましょうというと、めちゃめちゃ反論が来る。

 最近、インターンシップにほぼすべての学生が参加しているので、大学で工場見学に引率するのは止めましょうとある先生に提案してみたら、それでは幅広い企業を見れないからダメだとおっしゃる。いやしかし、工場見学よりもインターンでどこかの部署で就業体験したほうが一社をより深く知ることができるし、時間は有限なんだから幅と深さの両方を言い出したら、時間がいくらあっても足らんと思うよと言ってみたんですが、どうもピンとこないようでした。あとはどうせ言ったところで減らせないという諦めも見えました。

 勝手な推察ですが、大学の場合は、業務効率化によって今までの仕事も新しく増えた仕事も質を落とさずに処理出来ていて、したがって仕事を減らそうというのは怠惰であるという考えがあると思うんですよね。しかしそんな訳があるはずなくて。やめてもいい仕事と止めてはいけない仕事、区別せずに減らしやすい仕事を減らしているだけだと思います。それよりもきちんと何をやめてもいいのか議論して、時間の減らし方を制御したほうがずっと生産的というか、学生にとってメリットがあると思うんですが、あまりほかの教員には共感が得られず、ちょっと寂しい今日この頃です。