センター試験の運営

 センター試験がありましたが、ヤフコメみていると色々と試験監督のミスに対する批判が飛び交っています。身内の立場になると非常に悲しいです。

 色々な資格試験と比較して、センター試験でミスが起きるのは当然で、これは運営の手順が複雑だからです。例えば、TOEICの試験で、遅刻者に対して遅刻時間に応して対応を変えるということはありません。席とCDプレーヤーの位置関係の問題が生じる可能性があるために、全員にイヤホンとプレーヤーを個別に配って問題を聞かせることもありません。試験監督は予定通りに会場に来て、プレーヤーのテストをして、用紙を配って、時間になったら用紙回収で終わりです。ミスする訳がない。

 ミスが起きるもう一つの原因は運営の練習していないからです。センター試験のマニュアルは200ページ以上あり、但し書きがたくさんあって、すべてを網羅するのは困難です。全てのケースに応じて予行練習をすればいいのですが、その時間は与えられません。ここがミスの起きる原因なのは明白です。試験開始前は問題冊子や解答用紙を配ったり、注意事項を読み上げたり色々な仕事があります。これに手間取れば試験開始時間が遅れて、これまた世間からつるし上げを食らうため、当然焦ります。じゃあこの準備時間を延ばせばいいのではとなりますが、ここを伸ばすと受験生の帰りが遅くなってしまいます。そして、ここで遅刻者が”おくれました~”と言いながら入室してくると、殆どの試験監督はパニックになるでしょう。だって予行練習してませんもん。

 プライベートの時間を削ってでも学生のことを思えば練習時間を割くのが教員だろうと言うのは、日本人の悪い根性論の典型であり、こういうことを言う人はあまり社会経験がない人の意見だと思います。プライベートの時間を削ってボロボロになっている教員の授業の質は間違いなく落ちます。研究もできないでしょう。ノーベル賞なんて夢のまた夢です。何かをやれば何かを失うのです。失うのが嫌ならば、必ずヒト・モノ・カネが必要なのです。

 一番悪いのは間違いなく大学入試センターです。ミスを撲滅する気があるとは思えません。ミスを撲滅したければ、大学に対して相応の予算を渡して、教員がセンター試験の運営の練習をする時間を、非常勤講師などの雇用で確保すればいいのです。もしくは訓練された人間を雇用して試験を実施してもいいと思います。しかし実際は”現場でうまくやっといて”で終わりです。泣くのは受験生と現場の教員です。

 来年から新しい試験が始まるようですが、目的と手段が入れ替わったような試験の刷新にお金をかけるくらいなら、かけるべきところに予算をかけて、受験生が泣く事のない運営体制を作ってほしいものです。