短期記憶の弱さを何とかする

 日本では偶然だけでアホが大学の准教授にはなれないはずだが、そんな准教授の私の脳には致命的な欠陥がある。人の名前を覚えられないのだ。並みの覚えられないではない。例えば、新しい所属になってほぼ1年が経過したが、自分の学科の学科長の名前を思い出せなかった。2週間会わなかっただけなのに、自分の研究室の学生の名前が頭に浮かぶのに5秒かかった。当然、研究室OB、OGが来ても名前を思い出すのはほぼ無理。一人だけ女の子の面倒を見たことがあって、その子の名前はさすがに思い出せるだろうと思ったが、思い出せない。この業界では致命的な欠点である。

 名前の記憶に特に欠陥を抱えているが、短期記憶が全般的にヤバイ。変なところだと、定規の目盛りが読めない。1ミリおきに目盛り線が書いてある定規があって、例えば長さが183ミリの棒を測るとき、180のところには数字(18 cm)が書いてあるので、そこから3つとなりの目盛り線のところに棒の端があるからこの棒は183ミリとわかる訳が、これが読めないのだ。

 説明が難しいが、180のところから1つ隣の目盛り線を認識して、さらにその隣の目盛り線を認識して、さらにその隣の目盛り線を認識して183ミリと読むわけだが、例えば、ある目盛り線が182ミリを示す線であると認識しても、その次の瞬間にどの線が182ミリの目盛り線だったか忘れてしまうのだ。

 当然、会話でも苦労している。長い話になると、自分が何を言っていたかわからなくなるし、学会でも何を聞かれたか忘れてしまうことが多々ある。

 ただ、不思議なことにどうやら来年度も派遣社員を一人か二人雇うくらいのお金は取ってこれそう、つまり研究費の申請書は比較的よく書けているようだ。申請書は長い話の極みだと思うのだけれども、(採択されたという)結果だけ見れば、長い話の苦手な自分の申請書は相手に理解してもらえてるようである。申請書を書くときは、なるべくシンプルな文章で、それぞれの段落の言いたいことをクリアにして、その段落ごとの言いたいことを繋いで、一つの文章になるようにというのを心掛けている、というより、そうしないと自分が頭の中で論理を整理できないのだ。あと、割と学会では”先生の発表はわかりやすいね”と言ってもらえる。授業評価も悪くない。まぁ、研究のレベルが低いというのもあると思うのだけれども。それはさておき、そうやって、短期記憶の弱い自分が、何とか長い論理を整理する訓練の結果が、採択とか、わかりやすい説明に結び付くのかなぁと思う今日この頃でした。