最高IF5の弱小研究者が基盤Bを取るノウハウ

 どこの研究機関でも一度は著名な研究者を呼んで、科研の申請書の書き方のコツとか、審査員として申請書のどこを見たかといった内容の講演をしてもらっていると思います。でも、科研の申請書に関しては、著名な研究者の話を聞いても仕方ないと思うんですよ。高級な食材(ネタ)を使えば料理の腕があんまりなくてもカバーされるじゃないですか。そうではなくて、イマイチパッとしないネタしかないけど、それをなんとか上手に料理して科研を取るノウハウこそが求められているのではないかなと。

 そこでまぐろ君の出番ですよ。なんせ最高IFが5ですからね。平均は2くらいかな。一年に出す論文数もファーストorコレスポ2報くらいです。そんなパッとしない研究実績、大したことないネタで若手B×2、基盤B×2を取ったまぐろ君が科研費の申請書を書くときに意識してることを書いてみようと思います。ちなみにまぐろ君は工学系です。

 ぱっと思いつくのは、

1.サイエンスとしての面白さをアピールすること。

2.(サイエンスとしての面白さに加えて)、期待できる研究成果がどんな形で社会に還元されるかをアピールすること。

3.どんなグラフ(論文)をだすか分かるような申請書にすること。

ですかね。まぁ他にも考えていることはあると思うんですが。

  1は科研費なので当たり前なんですが、やっぱりサイエンスとしての面白さのアピールは必要だと思います。で、まぐろ君は能力低いんで必然的にそうなるんですが、学部1,2年生でもわかる話が良いと思います。過去に科研を取った例で説明すると、黒鉛の潤滑機構についてのテーマで申請しました。高校で習うはずなんですが、黒鉛は炭素原子が網目状に配列し、その網が積み重なった構造を持っています。その網と網の間の結合(van der waals結合)が弱いので、この網同士がすべりやすく、これが黒鉛の潤滑性の起源とされています。で、その前提で行くと、この網と潤滑される材料の面は平行になっていないといけない訳ですが、じゃあなんでそう都合よくこの炭素原子の網が材料の面と平行になるんですか?べつに材料の面と垂直でもナナメでもいいでしょ?なんで平行になるの?というのがいわゆる「学術的な問い」でした。これ、めちゃめちゃ分かりやすいと個人的には思うんです。ロジックとしては高校生でも分かる。はず。

 2は、この研究の場合だと、この平行になる機構が分かれば、もっと潤滑性の高い潤滑剤ができるでしょ?的な内容でした。これも学部1,2年生でも分かる話が良いと思います。潤滑剤として実用されている黒鉛の網の一部が、材料の面と平行でなかったとしたら潤滑性は100%は発揮されていないはずで、この平行になる機構を理解して、全部キチンと平行にしたらもっと潤滑性が高くなって、摩擦で失われる損失が減りますよみたいなよくある話です。ただ、文献は多めに引っ張ります。

 3は、論文を書くときに最初に図(グラフ)を並べると思うんですが、その図をその順で申請書に書くイメージです。その図を作るデータは予備実験で取る訳です。さらに、その図には一部プロットの欠損があって、その欠損は現状の実験装置では取れず、その申請書でとったお金で買う装置で取るんだという説明をします。こうすると、すでに取られているプロットを得た実験手法は確立されているので、その手法と購入する装置を組み合わせれば問題なくデータが得られ、なおかつ論文にもなるだろうと思わせるわけです。

 思いつくままにつらつらと書いてみました。まぁ、当たり前のことしか書いてないかもしれませんが、お役に立てば幸いです。