日本人の気質の欠点

 工学部の修士課程を卒業したあとは民間で4年ほど設備設計やっていました。設計と言っても、図面を書くのは仕事の一部で、予算を取ったり、見積もりを取ったり、現場や工務とスケジュール調整をしたりと、仕事は多岐にわたります。設備設計の部署は社内でもキツイと言われるところで、退社時間が夜10時とかは普通でした。
 
 企業にとって設備投資に投じる資金は相当なものです。売上高の数十%にのぼります。設備設計部門が人手不足のために設備投資業務の細部まで手が回らないと、設備投資に色々と無駄が生じます。問題は設備投資額が大きいので、わずかな無駄も他の部署と比較してとんでもなく大きな金額になることです。

 

 しかし、部署のマンパワーが、投入される設備投資額に対して不足していることは明らかでした。数千億円をたったの100人で回していたんですから。私の席のあった島は合計で8人いましたが、ここで500億円くらいの設備投資を捌いていたと思います。

 

 ですので、退職する1週間くらい前に上司に言いました。5000億投資するとして、その0.1%でも5億。これだけあれば、正社員一人の雇用に2千万かかるとしても、25人雇える。それで、じっくりと案件に向き合って、より良い設計、より良い立ち上げ計画ができれば、10%くらい費用を圧縮できるんじゃないですか。しかもみんな残業が減っていいことずくめではないですかと。すると上司からは、それは分かっているけれども、逆に言えば、うちの部署は人が足りないから10%も投資金額を無駄に使っていますと言っているようなものだから、そんなことは上に言えないというような趣旨のことを言われました。

 

 まぁ、これが大人の事情なのかなと思うのは簡単ですが、それにしても犠牲が大きいと思いました。忙しすぎて結婚できない課長は一人や二人じゃありません。鬱になる人、離婚する人etc...。挙句の果てに残業は40時間までしかつけさせないという鬼畜っぷり。どこの組織でも同じようなことはあると思うんですけどね。学校もそう。

 

 今の環境が不満で、それを解決できて実現性のある方法があるなら、我々平社員がもっと声を上げて上層部に訴えればいいんです。与えられる環境にいい環境なんてあるわけがない。いい環境は勝ち取らなければならないんです。平社員は圧倒的に数が多いし、実働部隊は平社員なんだから彼らの声を無視して管理職は組織を維持できるはずなど無いんです。でも声を上げない。というより、声を上げる訓練を日本の教育は意図的に避けてきたのではないかと思います。こんなに管理側にとって都合のいい国民は世界にいません。不満があっても声を上げずに寡黙に頑張る日本人の気質。これはもはや欠点になりつつあるような気がします。そのくせ陰で文句ばっかり言うしね。