教育機関の研究職はいいと思う

 自分が学生だった頃は、民間企業の研究開発部に行きたかった。というのは、研究が好きだけれども、研究テーマを自分で考える自信がなかったから。企業の研究開発部であれば、少なくとも若手の間は上からテーマを与えてもらえるので、テーマを思いつかないかもしれないという不安を感じることなく、研究の発見の喜びだけを味わえると考えてました。実際はどうなのか知らないけれども。

 実際は、民間企業に入るところまではその通りでしたけど、部署は設計部門でした。とにかく自分は設計が嫌いで。うまくいって当たり前、ミスがあればそこら中から文句を言われるし、とにかく部門間の調整作業が多く、それが楽しい人もいるかもしれないけれど、自分は性格的に向いていませんでした。嫁いわく、もう10年以上前だけど、今より断然白髪が多かったとのこと。

 これ以上は無理だ!と思って、どうにか学位無しで雇ってくれる教育機関に入って研究のようなことを始めました。念願の研究をできることになったのですが、最初は大変なことばかりでした。上司がいない独立の研究室だったので、良くも悪くもすべて自己責任。そして、いままで図面引いていた人間に研究テーマなんて思いつくはずもありません。そして設備は超貧弱。カッターと古い光学顕微鏡と年間30万円程度の研究費だけ。民間で研究開発部にいる同期は潤沢な予算と設備で高給もらって何の苦労もなく研究してるんだろうなぁと嘆いたものでした。

 あれから10年以上たって、テーマもそれなりに思いつくようになり、設備も整ってきました。そんな今の立場から考えると、やっぱり教育機関の研究職はいいなと思います。特に研究室をマネジメントできる立場になると最高。

 研究者として一番うれしいのは、興味の向くまま研究ができること。Aというテーマに取り組んでいる最中に面白い現象を見つけたら、Aは続けつつ、見つけた現象に関連するテーマBもできる。これが一番いいと思います。民間だと面白い現象を見つけてもそうそう簡単には勝手にテーマBには取り組めないはず。もちろん、科研費とか外部資金を取れうるテーマでないといけないけれど、慣れてしまえば大抵のテーマはお金を取れると思います。

 もう一つ、”不良”研究者としてうれしいのは、休みを比較的簡単に取れること。旅好きなので、ちょっとアジアでもふらついてくるかーと思えば、公務さえなければ比較的簡単に長期休暇を取れます。ハードルが高いのはむしろ嫁さんの許可。

 こんないい仕事はそうそうないと思います。自分は本当に運がいい。けれども人はいつも無いものねだり。結構ブログには不満ばっかり書いてますね。もうすこし与えられた幸運に感謝しないといけないと思う今日この頃でした。