未来を見て途方に暮れ、過去を見て元気づけられる

 転籍して2週間が過ぎました。実験室はぐちゃぐちゃで設備稼働率20 %位、学生部屋も殺風景なことこの上ないが、少なくとも自分の居室は人の住める環境にもっていけました。授業準備も一応2週分のストックができたし、ゴールデンウィークがあるのでこの間に残りの準備も終わる予定。

 さて、前の機関と比較して、周囲の研究レベルはかなり上がっている。外部資金で評価すると、教授クラスだと1億とか取っている人が結構いる。准教授でも基盤Bは普通に取っているし、論文を読んでみてもレベルがやはり高い。感覚的に自分の立ち位置は現状の論文・外部資金獲得額では中の下、研究の素養的には下の中くらい。素養というのは、今のテーマを伸ばしていったときに、サイエンスとしてどの程度深みをだせるか、どの程度の外部資金を取れるかで考えています。今のテーマだと、最高に頑張ってIF=5.0、お金は1000万円、基盤Bが限界だと思われ、ちょっと教授になるのは難しそう。一方で教授クラスの研究ができるようになる道筋が全く見えない。

 学会に行って気が付くのは、多くの研究者が何らかの流派みたいなものに所属している事。エライ教授先生のラボ出身で、そこで脈々と受け継がれている考え方とかセンスをしっかり身につけているから、研究内容にも一代ではちょっとできない深みがある。それと比較すると、自分はたまたま見つけた発見を必死で膨らましているだけで、全然研究内容に深みが無い。

 学位にしても、「学位無いと今の職場で困るだろうから、とりあえずウチで取らせてあげるよー。」みたいな先生のところで取ったので(取らせてくれたのは本当に感謝しているが)、その教授の助教の人におんぶにだっこ状態で、ほとんど指導も受けておらず、従って、薄っぺら―い学位になっている。それを踏まえると、転籍したのはいいが、これからやっていけるか不安ばかりが募る今日この頃です。

 ただ、過去を振り返ってみると、10年くらい前に前の機関に着任した時は、学生のテーマをひねり出すことすらしんどかったし、科研費も取れるとは思ってもみなかったし、論文書けるとも思っていなかった。しかし、今は学生のテーマを思いつくのは簡単だし、科研も取れたし、年に2報くらいはIF=3くらいの論文を書けるようになった。多分10年前の自分が知ったらびっくりすると思う。それを思えば多分頑張ればなんとかなるんじゃないかなとも思う今日この頃。ただ、学位を取った時の苦労はもうイヤだな...。