大学の先生と大学の先生と話をする

 今日は某国立大学の先生と一緒に、某国立大学の先生のところに特許の相談に行った。前者の先生は40才くらいだったかな。後者の先生は名誉教授。僕のアイデアを前者の先生が膨らませてくれて、とても良い研究と良い特許ができそうなんだけれども、何分、アイデアというか技術の出口は我々若手二人の専門外なので、名誉教授の先生のところに相談に行ったわけ。餅は餅屋なんで、何でも一人で抱え込まず、上手に他人の力を借りないとね。それが結局大きな成果を生むし、関わった人みんなが幸せになれる。

 最初に若い方の大学の先生から名誉教授の先生に特許の概要の説明をしてもらったんだけど、やっぱり大学の先生は説明の仕方がカッコいいね。”自由エネルギー”なんて言葉がスッと出るあたりカッコいい。自分は元々企業の現場にいたので、どうしても幼稚な言葉しか出てこない。まぁ、そういう訓練をしてきたのだけれども、もう企業の現場からは大分離れたところにいるので、自分も少し言葉を選ぶ必要があると思う。恐らく、先日の大学の公募の面接もそういう所で落とされたんじゃないかな。やはり職種にふさわしい言葉遣いというのはあるよね。

 特許の話の結果としては、具体的にどんな請求項にするか、どんな実施例を入れていくか、実施例で挙げるべき測定データ、測定方法が明らかになった。特許で一番大切なのは請求項。しかも請求項ではモノの権利を主張したい。プロセスで特許を取っても、その周辺技術で権利を取られる可能性があるからね。ただ、モノの権利の主張は難しい。

 今回の我々が考えた技術は、従来の技術で作られた製品の特性を二ケタくらい高くするものなんだけど、逆に言うと、従来技術で作られた製品も、我々が考えた技術で作った製品の二けた低いとはいえ同じ特性を持っているので新規性が無いということになる。例えば「10 rpmで回転する円盤形状の板で、その表面の凹凸を電気信号として取り出すことのできる板」という請求項を持った特許があるとして、我々が1000rpmで回してもデータを読み出せる円盤を開発し、「1000 rpmで回転する円盤形状の板で、その表面の凹凸を電気信号として取り出すことのできる板」という請求項を持った特許を出すと、これはまず特許庁が認めてくれない。1000 rpmで回すことに対して桁違いの技術が必要だったとしても。だから請求項は少しひねって書かないといけない。そのひねりかたが、専門外の我々には思いつかなかったのだけれど、名誉教授の先生はとても素晴らしい捻り方を教えてくれた。ついでに今後の研究についてもアドバイスをくれた。

 帰りは若い方の大学の先生と色々な話をした。博士課程の学生を取ったらどうやってテーマを決めたらよいか、研究のコアはどうあるべきか、査読はどのくらいしてる?等々といった話。今の職場にも同年代の先生はいるが、あまり研究の話はしない。僕はもっと研究の話をしたいのだけれども、そういう空気にはならない。だから、この若い方の先生との話は本当にタメになる。僕はそれなりに論文も特許も外部資金も取ってきて、実績はあるのだけれど、アカデミックの世界の常識をあまり知らずに仕事をしてきたため、実績のわりに、本当に自分のやり方は正しいのか、心配になることが多々ある。博士課程の学生のテーマの決め方なんて特にそう。そもそもテーマを設定するのが難しいし、かみ砕きすぎれば学生が成長できず、全く砕かなければ論文が出ない。大学公募を考えていると、博士課程の学生のテーマをうまく決められるか心配だったが、この若い先生の”やっぱりテーマを決めるのは難しいですよ”という言葉に凄く安心させられた。我々の歳でテーマを決めるのは難しくて普通なんだなと。

総じて今日は有意義な一日だったな。