アフターコロナで心配なこと

 我々の仕事の楽しいところはたくさんあるんですが、個人的には出張が多いことが一番楽しいところです。旅行が趣味なので、趣味と実益を兼ねてるというか。それと、同じことの毎日が嫌いなので、普段と違う土地で、普段と違う人と何かしないとストレスがたまります。あと、家事育児から解放される。もちろん、仕事がすすむということも大切です。いままでうんうん悩んでも、ちっとも前進しなかったことが、専門家に相談するだけであっけなくできてしまうことは多々あります。

 この出張の機会がアフターコロナで激減するのではないかと心配しています。企業にとっては出張費は減らしたい一方ですので、間違いなくこれを口実に、また、テレワークでできることがかなりたくさんあることが分かってきたので、テレワークで終わらせろ圧力が高くなり、出張機会が減るでしょう。特に大企業は。そして、出張は相手のあることですので、一か所が減れば、連鎖反応的に他も減るでしょう。

 学会も、リモートでやるところがこの夏と秋は増えます。さすがに学会自体をこれから全部リモートでやりましょうというのは無くなると思いますが、学術の世界でもリモートの可能性がある程度具体的に認識され、リモート化が進み、同時に外部資金のスポンサーも、「なるべく出張は控えてリモート化し、研究費の削減に努めること」的なことを言い出すでしょう(特に政府系)。

 これはすごく心配。この仕事の面白いところが激減してしまう。毎日実験、授業、データ整理で、発表は居室からリモート。なんか灰色の風景しか思い浮かびません。個人的にはこの仕事から出張が消滅したら、あとは成果が出なかったらクビを切られるという恐怖しか残りません。学生の成長こそが教員の唯一無二の楽しみだという人もいるでしょうが、それだけでやっていけるほど、この仕事のストレスは小さくないと思います。少なくとも私は他の仕事でもやっていけるほど器用ではないので、クビを切られたらもう生活保護まっしぐらです。

 更に怖いのは、出張の削減によってお金という分かりやすい指標で経済的な効果が見える一方で、その副作用となる研究の進捗速度の低下や新しい発見の数の低下は見えにくいので、一見して副作用なく出費が減っているように見えてしまうことです。研究の進捗速度の増減なんてわかるはずがありません。だって基本的にゴールまでの道筋が分からない状態で研究は進む、つまり現在地はわからない、距離÷時間の距離がわからないからです。新しい発見にしても同様です。

 まぁ、でも大なり小なり出張の機会は減るでしょうね。少なくとも数年間は。国際学会も絶望的。ほんとコロナウイルスは罪深いと思います。