企業との共同研究で得られたデータを科学雑誌に載せるには

 イントロが大事!というのが結論です。

 企業と共同研究すると研究費をもらえるのは良いのですが、その研究で得られるデータはどちらかというと科学的というより、事業化に必要な実証データの側面が強いので、elsevierとかが扱っているような雑誌に載せるのは難しいことが多いです。

 去年まで安いベンツ3台分くらいのお金をもらって、ものすごく費用と手間をかけてとったデータがあるのですが、どうにも科学的な価値を見出せず、取っただけのお蔵入りデータになるかなと半ば諦めていました。

 しかし、この一枚100万円くらいかかっている写真をお蔵入りさせるのは何とも勿体ないなぁと毎日頭の片隅で考えていたところ、「こういう風にイントロ書けば成り立つんじゃね?」と閃きました。

 なかなか例えるのが難しいのですが、例えばキュウリの断面の写真を10枚とっても普通は何の価値もないですよね。でも、イントロで

 「キュウリの維管束は、キュウリ自身の機械的強度の発現と水を吸い上げる二つの機能を持っている。維管束の形状を、キュウリの機械強度を最大化するように決定すれば、水の吸い上げる際の圧力損失は増加し、逆に圧力損失を最小化するように決定すれば、機械強度が低下する。従って、例えば水の量が少なく低圧損で効率よく水を吸い上げる必要がある、強風でキュウリが振り回されるため高い強度が要求される、といったキュウリの育つ環境によって、維管束の形状は一定の傾向を示すと考えられる。そこで、日本全国のキュウリの断面写真を基に維管束の形状を3次元化し、その形状の傾向とキュウリの育成環境の関係を評価、解析した。」

なんて書かれていたらどうでしょう(長くてすいません。簡単な例えが思いつきませんでした)。日本各地のキュウリの断面写真10枚セットを延々と取るだけの研究にも価値があるような気がしませんか?そんな訳で、キュウリの断面写真を撮っただけの共同研究でしたが、うまいことイントロさえ書けば、どうにか雑誌に載せられるなということにやっと気が付いた今日この頃でした。

 ちなみに私の知り合いにはホワイトノイズだけでインパクトファクタ―7の雑誌に論文を掲載する強者がいます。参考文献を100本くらい引っ張ってきて崇高なことを言っているように見せかけて実は中身が無い話を延々としている論文なので全然尊敬できませんが。そういうのとは別で、データの切り口を変えることで科学的な価値を見出すようにイントロを書けば、かなりのデータが論文になるという話です。